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No.22 由美の二都物語

思い切って、ヨーロッパに行ってきました。
一週間の駆け足旅行でしたが、久しぶりの空気を満喫してきました。

パリを訪れたのは、なんと20年ぶりのこと。
サンジェルマン・デ・プレに1か月滞在し、
パリ中をくまなく歩き回ったその頃とはまったく違う印象で、私を迎えてくれました。

第1日目、時差もあって朝早く目覚めた私は、
ホテルを抜け出すと、思うままに歩き始めました。
凍てつくような寒さの中、
やっと明るくなった道を進むと、偶然ルーブルに行き当たりました。
人っ子ひとりいないルーブル宮の広場で、
まわりを囲む壁に彫り込まれた無数の彫刻を眺めていると、
この街を創ってきた年月と、人々の情熱がじかに伝わってくるようで、
突然深い感慨に襲われました。

そしてセーヌ河を彩る紅葉した木々を眺め、チュルリー公園で落ち葉を踏みしめながら、
この街の奥深さを感じきれなかった若い日の自分を振り返りました。
イギリスで感じた人の温かさや、少し田舎風の素朴さに慣れていた私は、
パリの持つ完成された美しさや、人々の素っ気なさを、
冷たさとして受け止めたのだと思います。
いまひとつ、しっくりこなかったそのときの印象が、
その後の私をなかなかドーバー海峡を渡る気にさせなかった理由だったのでしょう。
今回、たった3日間の滞在でしたが、英語が格段に通じるようになっていることに驚き、
また一人前の大人として扱われたためか、何ひとつ不愉快なことがなかったこともあり、
遅ればせながらすっかりパリファンになってしまった私でした。

パリから空路で2時間弱、イタリアはヴェネツィアに到着します。
4回目のヴェネツィアでしたが、こちらも10年ぶりです。
こんな不思議な街は世界中を探したって絶対にありません。
なにしろ、海から街が生えているように見えるのです。

ヴェネツィアを訪れた理由は、先日共演した、ヴェネツィア室内合奏団の演奏を聴くため。
本拠としている、サン・ヴィダル教会での演奏をぜひ味わってみたかったからなのです。
ヴェネツィアの街は数え切れないほどの運河が張り巡らされ、
狭い道はまるで迷路のようです。
角かどで道を尋ねながら、やっと教会にたどり着きました。
教会の中に入ると、超満員の人で埋まっています。
カルパッチョ独特の赤と白の色調の絵をはじめとする美しい壁画が、
四方の壁を覆っています。

演奏は素晴らしいものでした。弦楽器の音色とチェンバロの軽快な音が、
豊かに響いています。
緩急自在の見事な音楽は聴衆の熱狂を呼んでいました。
この会場で、なんと年間300回にものぼる演奏会を開いている彼らですが、
つねにたくさんの聴衆を得ている理由がよくわかります。
再会を約束して、ヴェネツィアを発った私でしたが、
いまだにその余韻がからだに残っています。
2004年12月1日
山形由美
 
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