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夏の観察日記 〜イワダレソウ「クラピア」を植えて〜

暑中お見舞い申し上げます。
とは申しましても、今年の夏は天候がなかなか定まりませんね。関東では2週間以上も前に梅雨が明けたはずなのに、まだぐずついていますし、福岡や山口では大雨の災害に見舞われ、群馬や京都は大きな竜巻や突風に襲われました。被害に合われた地域の方々に、心よりお見舞い申し上げます。 那須も例年になく雨の多い夏を迎えています。リゾート地なので、夏休みに訪れる皆さんのためにも燦燦と太陽に照ってほしいと思っていますが、ひとつだけこの雨が幸いしてくれたことがありました。

夏休みモードに入った私は、雨の上がった朝、庭仕事に励みました。今大きな注目を集めている、ある植物の苗を植えたのです。この植物の存在を知ったのは2年前のこと。NHKのラジオ番組に出演したとき、同じくゲストとして招かれていた宇都宮大学・雑草科学研究センターの倉持仁志先生のお話に、私は興味を持ちました。 沖縄などに見られるイワダレソウという植物の在来種を基に、先生が研究を重ね、芝に代わる品種として改良していらっしゃるというのです。一般家庭の庭では背丈が低いので刈る必要がなく、しっかりとした根を張り広がるため、手間のかからない優れたグランドカバーとして利用できること。さらにそれを使って砂漠の緑化を進めるべく日夜努力を重ねられているとお聞きし、私は大きなロマンを感じました。そして私が、イングリッシュガーデンに憧れて自宅の庭に芝生を貼ったものの、なかなかうまく育てられないという悩みを申しますと、
「それならまずはこれを植えてみたらいかがですか。那須の寒さにも強い別の品種もあるから、必要なら宇都宮までどうぞ訪ねてください!」
というお言葉と共に、そのときお持ちだった3株の苗をご親切にもくださったのです。


自宅に帰るとすぐにそれらの苗を、どうしても芝が付かなかった部分に植えてみました。そして冬を越すかしらと心配していたのですが、無事に乗り越えることができたのです。そしてこの春にはたった3つの株が、なんと2平米くらいまで広がったではありませんか!隣の芝生は毎週専門家の方に手入れをしていただいているにもかかわらず、何だか白っぽくまだらなのに、イワダレソウはしっかりと地に根を下ろし踏んでもびくともしません。青々とした葉に可憐な白い花が付いているのにも感激していたところ、たまたま朝日新聞の紙面で倉持先生の近況を目にしました。記事によりますと、先生は更なる改良を重ね、砂漠の緑化に利用するための実用実験が中国やアラブ首長国連邦などで進められているとのことでした。ビルの屋上緑化にも使われ、ヒートアイランド化にも一役買っているようです。これぞまさしく時代が必要とする、エコロジカルな研究と言えましょう。 心の中で「ブラボー!」と叫びながら、先生にご連絡を取ってみることにしました。ご努力に対する成果が実りつつあることへの賛辞をお伝えしたかったことと、苗をお分けいただくお願いをしたかったからなのでした。 そして届けていただいたのが120株のイワダレソウの改良種、耐寒性の「クラピア」なのです。芝がどうしても付かない部分に小さな苗をひとつずつ植えていったのですが、連日の雨のため地面が柔らかくなっており、特に大変な作業ではありませんでした。そして植え込み後の10日間は毎日の水やりが欠かせないそうなのですが、その手間も省くことができます。雨の多さをつまらなく思っていたことが、この点では幸いしたと言えるでしょう。

先生が与那国島を訪れた際、可愛らしい野生馬に誘われるよう原を進むと、足元にある草になぜか心が惹かれたといいます。そうして偶然に出合った自生のイワダレソウが、ひいては地球温暖化への対抗策や砂漠の緑化への力になろうとは、夢のようなお話ではありませんか。この夏は庭に植えた小さな苗が広がるさまを観察しながら、地球の明るい未来に思いを馳せたいと思っています。


2009年8月3日
山形由美
 
※「クラピア」は倉持仁志先生によるイワダレソウの改良品種名で、種苗登録されています。
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